ねむたい毎日

20代OL 毎日ねむい

天才だった女の子

音楽仲間を亡くした。

彼女は私よりも6歳も若かった。私は一応先輩という立場になるのだけれど、彼女のテクニックも音楽への理解も感情を演奏に乗せる力もひとつもかなわないと思っていて、だから少しも先輩ぶれなかった。でもそうすると6歳も下の女の子と何を話せばいいのかわからなくて、いつも仲良くなりたいなあと思いながら、あこがれながら彼女を見ていた。

彼女は天才だった。こんな女の子がいるのか、と会うたびに演奏するたびに思っていた。彼女にはどういうバックグラウンドがあるのかすごく興味があった。

彼女と過ごしたのはたったの1年ほどだった。それも月に一度会うか会わないかだったから、彼女の人生の中のほんのわずかな時間だったと思う。コロナが落ち着いたら、みんなで飲みにいけるようになったら、たくさん話してもっと彼女のことを知って、もっと仲良くなりたいと思っていた。そんなことを彼女のいないところでいつも言っていた。

こんなことになってしまうなら、所構わずウザがられるぐらい話しかければよかった。当たり障りない話じゃなくて、何を聴いてきたのか、弾いてるときどんなことを考えてるのか、どんな音楽が好きか、ちゃんと聞けばよかった。

私は彼女についてなにも知らなくて、なにも語れない。彼女の人生がどんな20年間だったのか少しも知らない。それでも彼女のことを考えるとき、彼女の音楽が聴こえてくるのはすごく幸せなことだと思う。